設備投資の可否はどう判断する?
こんにちは。BRMz共同代表の熊澤です。
設備投資を行うか否かは会社にとって大きな判断になります。特に多額の設備投資は会社の運命を左右する決断となることもあるでしょう。
「設備投資していいかわからない」「計算の仕方はわかっているけどそれだけでよいのか不安」という方は、本稿を参考に考えてみてください。
設備投資を数字で可視化する
まずはその設備投資について、投資の可否の判断基準となる計算方法の種類について説明します。
3つ代表的な計算方法を挙げますが、それらを用いるためにはフリーキャッシュフロー(以下、FCF)を求める必要があります。一般的にはFCFは以下の計算式によって求めます。
FCF = 営業利益( 1 ー 税率 )+ 減価償却費 ー 投資 ー ΔWC
なお、WCとはWorking Capitalの略で、運転資本を表します。WCは以下の式によって求めます。
WC(運転資本) = 流動資産 ー (有利子負債を除いた)流動負債
Δとは変化量のことを表すので、ΔWCとは運転資本の増減値を表します。つまり「日々のオペレーションに必要な投資」を表しています。
NPV ( Net Present Value : 正味現在価値 )
詳細な計算方法は各種参考書に譲ろうと思いますが、簡単に言えばNPVとは「将来のFCFを現在の価値に変換する」という計算を行います。
一般的には「NPVが正ならば投資し、負ならば投資をしない」というのがセオリーです。
IRR( Internal Rate of Return : 内部収益率)
これも簡単に表すと、「割引率が何%ならばNPVが0になるか」を計算します。
一般的には「IRRが自社の資金調達コストより大きければ投資し、小さければ投資しない」というのがセオリーです。
投資回収期間法
投資したお金が何年間で回収されるかを見積もって、その期間の長さにより投資するかどうかを判断します。
一般的には回収期間に社内規定を設け、「社内規定より期間が短ければ投資し、長ければ投資しない」というのがセオリーです。
計算結果で判断せず、計算過程で想定した前提条件を確認する
では上記の計算で「投資OK」という結果になれば、すぐさま投資してよいのでしょうか。
ここで注意してほしいのが、計算をする際には必ず前提条件があるということです。
FCFの計算式には、営業利益、減価償却費、投資、ΔWCと4つの要素がありました。これらの要素のうち、分析結果に大きなインパクトを与えている要素はどれでしょうか。そこが変化する可能性はどれくらいでしょうか。また、変化するとしたらどの程度変化するのでしょうか。
例えば、NPVが正となっていても、計算過程のFCFで営業利益が重要な要素をしめていて、その前提として「市場成長率を年率5%」と設定していたとします。
この際、市場成長率が何%までならNPVが正になるのかという感度分析を行う必要があります。市場成長率を変化させ、NPVが負になる値を見つけ出します。仮にそれが4.7%という数字になった場合、前提とおいた「市場成長率5%」がどれほどの確度なのか、少しでも下回ればNPVが負になることを考えて慎重な分析が必要でしょう。
このように、「計算して終わり!」では危険なのです。
定性面での重要事項を勘案し、総合的に判断を行う
では感度分析も完了し前提条件の確認も終了したとします。しかしそれで判断が完璧に行えるかというと、そう簡単にはいきません。
これまで説明してきたのは、「1つの投資として経済的な合理性があるか」という観点での定量的な分析でした。しかし、定量的な分析だけでは投資判断が失敗してしまう場合があります。
例えば、食品会社でとある設備投資を行って商品Aの味の改良をする計画があったとします。現在Aは味の面で思うような評価を受けることができておらず、今回の設備投資では味が大幅に改善される見込みです。この食品会社が味に定評のある会社としてブランドを作ってきていた場合、たとえ定量的な分析で悪い結果が出ていても、ブランドイメージを守るために今回の設備投資は必要となる可能性があります。
このように、会社のミッションや経営戦略に照らして考える定性的な分析も含めて総合的に判断する必要があります。
まとめ
本稿では以下の3点をお伝えしました。
・設備投資の経済性を評価するためにNPV, IRR, 投資回収期間法の3つを用いる
・計算に用いた前提条件を確認し、必要に応じて感度分析を行う
・定性的な重要事項を踏まえた上で、総合的に設備投資の判断を行う
ただし、実際に設備投資を行う際、FCF計算の前提条件の設定や感度分析の計算、定性的な分析など自社人材のみで考えると思わぬ落とし穴があるかもしれません。
複業集団BRMzでは多様な業界・業種の出身者が在籍しており、今回のような設備投資の可否についてもお客様と一緒に考え、支援することが可能です。
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