【経営戦略×人材採用】採用選考における注意点を知りましょう‼

こんにちは、BRMzの池田 雄紀(中小企業診断士)です。

前回の記事で「採用プロセス」を考えてみました。
ここからは採用選考について検討していきたいと思います。
採用選考においては、応募者と企業側のフィーリングが大事なのは言うまでもありません。
しかし、それだけでは間違いなく「ミスマッチ」が生じます。
限られた時間での「フィーリング」には限界があるからです。

加えて、採用選考では絶対NGとされる注意点があります。
本稿では、「採用選考における注意点」をまずご紹介したいと思います。

<<前回までの記事>>
【経営戦略×人材採用】御社の採用戦略を考えてみませんか‼
【経営戦略×人材採用】御社の「求める人材像」を考えてみましょう‼
【経営戦略×人材採用】御社の採用プロセスを設計しましょう‼

「公正採用選考」とは?

「採用プロセス」とは?

採用選考にも「あるべき姿」が存在します。
実は、厚生労働省や都道府県の労働局、ハローワークといった公的機関が公表してくれています。

名付けて「公正採用選考」。
国民が就職機会を等しく享受しうるよう、基本的人権を尊重した採用選考が全ての事業主に求められています。
ここでは、求人条件の設定だけではなく、採用選考においてもあらゆる人を排除しないという価値観が根底にあります。
なるべく平等な競争条件を整え、応募者に心理的な不安を与えないように、ということですね。

厚生労働省では、下記の要件を満たす事業主に対して「公正採用選考人権啓発推進員制度」を設けています。

○常時雇用する従業員の数が50人以上
○常時雇用する従業員の数が50人未満であって就職差別事件またはこれに類する事象を惹起した事業所
○以上に関わらず、職業紹介事業、労働者派遣事業を行う事業者

「自分はここまでの規模/業種ではないから大丈夫」
そう思ったあなたは要注意です。

従業員を1人でも雇用しようと思うのであれば、必ず押さえなければいけない点です。
厚生労働省の各労働局では「雇用主研修会」を開催して、事業主や人事担当役員に対して、人権問題の理解と認識を求めています。
上記にあるような就職差別事件やこれに類する事象が周知の事実となれば、社会的な信用に関わり、取引関係を左右することすらありえます。

同和地区出身(被差別部落)、女性、障害者、外国籍の人々に対する古くて新しい問題は、いまだに日本社会に影を落としています。
また、最近ではLGBT(Q)の人々への配慮も求められる時代となりました。
「自分は古い人間だから」とか、「自分は常識人だから大丈夫」などと慢心せず、価値観をアップデートするために一度全体を確認しておくことをオススメします。

インプット用の資料としては、例えば東京都産業労働局の「採用と人権」が挙げられます(毎年更新されます)。
また、上記推進員向けの研修として用意された動画がYouTubeで誰でも見られます。
まずは動画でご覧になってみてはいかがでしょうか。

どこを見るのか、何を引き出すのか

人員計画・採用計画をどう作りこむか

冒頭で「フィーリング」と書きましたが、複数の応募者がいる場合に、優劣をつけるポイントを考えておく必要があります。
その際、「公正採用選考」の考え方に基づいて、応募者の適性と能力を知る、つまり本人の資質だけで採否を決める必要があります。

面接官は、①応募者本人の資質を探り、引き出す質問をすると同時に、②応募者に「一緒に働きたい!」と思わせる役割を担っています。
企業側が一方的に選ぶわけではなく、「応募者から選ばれる」という視点も忘れてはいけません。
面接官の対応によって企業を選ぶ方もいます。
応募者にもっと振り向いてもらうために、動機付け(いわば「口説き」)を図ることが必要になります。
そうした意味では、御社のビジョンを語れる存在、社長や役員が最終面接に入ることが適当だとも言えます。

どこを見るのか、何を引き出すのか
その答えは百社百様と言えます。
御社が策定した「求める人材像」の輪郭を浮彫りするための質問を用意してください。

面接当日に思いつきで質問しようとすると、必ず抜け漏れが発生します。
また、複数の面接官で対応する際に、重複した質問を何度もされることは、応募者の心象を悪くします。

事前に何を聞くべきか整理しておくことで、御社にとっても限られた面接時間を有意義に使って、最大量の情報を取得出来ます。
理想を言えば、一問一答のような形式ばった面接ではなく、アイスブレイクから始まる自然な会話の中で質問できたらベストですね。
応募者が段々と緊張が解けたとき、面接官に見せてくれる表情もまた、判断材料となるはずです。

これだけは絶対NG

ペルソナが導きだす「募集・選考方法」に関する仮説

ここが難しいポイントですが、応募者の価値観、職業観を探ろうとするあまり、思想・信条に関わる事項や本人に責任がない事を尋ねることはNGです。
能力と適性に関わりのない家族構成等は聞く必要がありませんし、時に相手に対して悲しい感情を覚えさせる事もありえます。
当然、応募者が御社に持つイメージは悪化することになってしまいます。

くどいようですが、「公正採用選考」の中で、もう一度NGな事項を記載します。
なお、これはあくまで例示であって、NGな内容が網羅されているわけではありません。

<a.本人に責任のない事項の把握>
・本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
・家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること

<b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握>
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること

<c.採用選考の方法>
・身元調査などの実施 (注:「現住所の略図」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります)
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施

厚生労働省「公正な採用選考の基本」から

特に注意すべき点としては、悪気もなく、雑談の中で家族や家庭環境について聞いてしまうことです。
御社が採用プロセスを構築するうえで作った「ペルソナ」には、上記内容も含まれているかもしれません。
しかし、採用選考時に企業側が質問した以上、面接官の個人的な興味やコミュニケーションの一貫とは見てもらえないでしょう。
むしろ、選考情報として考慮していると解釈され、応募者が身構えることにつながりかねません。

思想信条についても直接的な質問で把握しようとすることは絶対NGです。
上記にあるとおり、普段読んでいる本を聞くこともやめておいた方が無難です。

面接官がやりがちなミスとしては、応募者自らが話題として切り出してきた際に、つい話に乗って根掘り葉掘り聞いてしまうといったケースです。
「会話が盛り上がっただけなんだからいいじゃないか!」という声が聞こえてきそうですが、「採用選考」である以上、普通の会話とは違うのです。
応募者に「選考の判断材料にされて不採用となった」と少しでも感じさせたらアウト、そう思っておくくらいで丁度よいのです。

本稿のまとめ

「採用選考における注意点」を本稿でお伝えしました。

意外にも細部にわたって神経を使わなければいけないシーンであると、ご理解いただけたのではないでしょうか。
最近では、中小企業においても、面接官あるいはリクルーターとなる社員に対して、研修やトレーニングを課すケースもあります。

なかなかそんな時間は確保できないし、面接官を任せられるような人材がいないという場合もあるでしょう。
複業集団BRMzでは多様な業界・業種の出身者が、採用選考やその設計をお手伝いすることもできます。
御社の経営戦略や人材戦略を中小企業診断士として把握したうえで、採用選考の設計をお手伝いします。

「とりあえずどこから始めればいいのか、相談にのってほしい・・・!」
「採用面接のやり方を教えてほしい」

そんなところからのスタートでも結構です。
まずは、BRMzまでお気軽にご相談ください!

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