【資金調達前には要確認】主要な経営指標を押さえよう
こんにちは、BRMzの松本 崇(中小企業診断士)です。
経営者や財務担当者にとって、「会社がどういった状況にあるか」を適切に把握するのは重要な仕事のひとつです。
客観的な数値をもとに自社を把握することで、経営戦略の立案や日々の経営判断に役立つのはもちろん、融資を受ける際の交渉にも説得力が出ます。
この記事では、資金調達前にも確認しておきたい主要な経営指標についてご紹介します。
どれも基本的なものではありますが、定期的に見ていないとついつい忘れがちなものでもあるので、ぜひこの記事をきっかけに振り返っていただければと思います!
押さえておきたい経営指標の5つの切り口
経営指標を用いて分析を行う際に、留意しておきたいのは多面性の担保です。
もし一面的な分析だけを行っている場合、企業の状況を正確に把握できず、誤った意思決定をしてしまうリスクがあります。
経営指標には、大きく分けると5つの切り口があります。
経営指標の5つの切り口
- 総合力
- 収益性
- 効率性
- 安全性
- 成長性
各指標で重視するものが異なります。それぞれの切り口から企業を分析することで、より正確に状況を分析することが可能です。
利益を上げる力を見る「総合力」
企業が存続していくためには、利益を計上し続けることが不可欠です。
最初にピックアップする総合力とは「企業全体として利益を上げる力」を指します。
この総合力を示す経営指標としては、ROAとROEが代表的です。
総合力を測る代表的な経営指標
- ROA=事業利益÷総資産
- ROE=当期純利益÷自己資本
ROAは、「保有する資産を使ってどれだけの利益を上げることができているのか」を示しています。
ROEは、「自己資本(株主からの出資とこれまでの利益の累計)から、どれだけ利益を生み出せているか」を示しています。ROEはその性質上、株主が特に重視する傾向にあります。
ROA・ROE共に、その算出式を分解することで、何を改善すれば数値が改善するのかが明確になり、企業としての改善ポイントを絞ることが可能です。また、同業他社との比較を通じて、利益を計上する力の差がどこにあるのかを分析することもできます。
総合力を分析する指標としROICなどもよく使われますが、いずれにしても、企業の稼ぐ力を見ることができるので、絶対に押さえておきたい切り口です。
利益のコスパを見る「収益性」
総合力が「企業全体として利益を上げる力」だったのに対し、収益性は売上・費用の構造的な面から利益を上げる力を評価します。
具体的には、売上高に対してどれだけの利益を計上することができたのか、すなわち「売上高利益率」を分析します。
特に、下で挙げる4つの利益をベースに評価することが多いです。
収益性を測る代表的な経営指標
- 売上高総利益率=売上総利益÷売上高
- 売上高営業利益率=営業利益÷売上高
- 売上高経常利益率=経常利益÷売上高
- 売上高当期純利益率=当期純利益÷売上高
例えば、売上高総利益率は、商品の粗利に焦点を当てた指標で、その原価率や商品力を判定する際に有効です。
どの利益を用いるかによって評価するポイントが異なるので、分析の際にはその点に留意しながら使い分けましょう。
売上のコスパを見る「効率性」
3つ目の切り口は効率性です。資産・負債面での無駄を排除しながらどれだけ効率よく(コスパよく)売上を稼げているかを示す切り口です。
効率性を測る際には、売上高に対し、どれだけの資産・負債を抱えているのか(必要としているのか)を分析するために、回転率という指標を用いるのが一般的です。
よく使われる回転率は以下の通りです。
効率性を測る代表的な経営指標
- 総資産回転率=売上高÷総資産
- 売上債権回転率=売上高÷売上債権
- 棚卸資産回転率=売上原価(または売上高)÷棚卸資産
- 有形固定資産回転率=売上高÷有形固定資産
- 仕入債務回転率=売上原価(または売上高)÷仕入債務
具体的に何の効率性をみたいかによって、重視する経営指標は異なるので、企業のビジネスモデルなどに合わせてどれが重要かを見極めましょう。
融資においては、在庫が嵩んでしまっていないかなどをチェックする指標としても注目されますよ。
財務体質を見極める「安全性」
安全性は、企業の財務体質が健全なのかどうかを判断する指標です。
対象とする期間、安全性を見極めたいポイントによって、以下の指標を使い分けます。
安全性を測る代表的な経営指標
- 短期安全性:
流動比率=流動資産÷流動負債
当座比率=当座比率÷流動負債 - 長期安全性:
固定比率=固定資産÷自己資本
固定長期適合率=固定資産÷(固定負債+自己資本) - 資本構造の安定性:
自己資本比率=自己資本÷(負債+純資産) - その他:
手元流動性=現預金+短期所有の有価証券
インタレスト・カバレッジ・レシオ=(営業利益+受取利息・配当金)÷支払利息
業種や企業規模によっても異なりますが、例えば流動比率は少なくとも100%以上、120%~140%程度が望ましいといわれます。
ちなみに手元流動性は、新型コロナウイルスの影響が続く環境下では特に重要な指標として見られる傾向があるので要チェックです。
経営の土台がしっかりしているかを見抜くうえで、安全性を把握しておくことは大切ですし、融資においても重要なポイントになりますよ。
未来を予測する「成長性」
釈迦に説法ではありますが、企業は社会に価値を提供し、その対価としてお金を受け取ります。
社会にとって必要とされているかどうかは、売上を継続的に計上できるか、利益を継続的に計上できるかどうかで見極められるといっても過言ではありません。
最後にピックアップしている成長性とは、過去と比較して、また過去から現在までの推移を見て、企業がどれだけ伸びているかを測る指標です。
主要な指標としては、売上高成長率や営業利益成長率、総資産成長率があります。
もちろん、過去の成長が将来の成長を担保するものではありませんが、これまでの企業努力を評価し、これからの期待を測る指標として用いられることは多いです。
経営指標を上手に活用した経営を!
この記事では、企業の現状を把握し、意思決定を行っていくうえで有効な、また融資においても参考とされる「経営指標」をご紹介しました。
もちろん、経営指標は万能ではありません。業種や会社の規模、成長ステージによっても求められる数値は異なりますし、あくまで会計上の数値なので、必ずしも企業の実態を表していない可能性があります。
ただ、だからといって使えない指標では決してありません。留意点を把握したうえで適切に活用することで、経営上重要な情報を得ることが可能です。
まずは経営指標の重要性を認識したうえで、継続的に指標の推移をみる、他社と比較することによって、経営数字を意識する癖をつけるのがおすすめです。そうすることで、融資を受ける際にも「共通言語」ができ、相談の際にもより自社のことを適切にアピールできると思います。
BRMzでは、こういった経営指標を用いた分析や、改善のためのアクションプランの立案も行っています。一度しっかりとした分析をしてみたい方は、ぜひお気軽にご相談ください!